夏の夕刻、突然どしゃ降りに降る雨のことではない。
海上自衛隊第七護衛隊が誇る護衛鑑<ゆうだち>のことである。
中国の我が国に対する挑発行為は、最近、頓にエスカレートするばかりだ。
先月三十日にも、この<ゆうだち>が中国海軍艦艇から、火器管用レーダーの照射を受けたというテレビニュースが流れた。
「名前が悪いわよ!」
対面キッチンから、身を乗り出すようにして、カミさんがリビングのテレビに向けて吠えた。
「<ゆうだち>なんて!勢いがまるでないじゃないか!」とニュース画面に<いわろう>が続くと、予想した通りカミさんが「<あさだち>に変えるべきよ!絶対!」といった。
<あさだち>とは、朝方突然さっと降る雨のことではない。
ましてや、朝早く旅立つことでもない。
ここでいう<あさだち>とは朝方、男性諸君の下腹部にある肉片に生じるチン現象のことだ。
「<あさだち>の方が、なんかサァ~!ピッと勢いよく応戦出来そうで、頼もしいジャン!」カミさんの鼻の穴が微妙に膨らむ。
そのあとも<いわろう>の予想がまたまた的中した。
「あなたのアレとは、無縁の話しだけど…」とカミさんがいった。
『だれだよ〈ゆうだち〉ってショボイ名前をつけたヤツは?とんだトバッチリを被った』〈いわろう〉は、グチュグチュとひとりごちた。
ところで<あの行為>が、中国軍部の単独暴走だと見る、一部の専門家の話しがもしも真相なら、誠にキナ臭い話しだ。
それから最後にいっとくが・・・。
<いわろう>の<朝立>はいまもビンビンで、立派に現役である。そのことは、もちろんカミさんには内緒だ。知れると、変な要求をされてもかなわない。



だが、半世紀以上も前のことなると、ほとんどの記憶が気持ちよく消え去っている。
そんな中、消えないでいる記憶もある。
そのうちのひとつだが、小学三年生の春のこと。
クラスのマドンナ的存在だった女子MKさんから、お誘いを受けた。
もちろんいまでも彼女の名は、フルネームで覚えている
「労チャンも!わたしの誕生日パーティーに来てくれる」
ひそかに憧れていた金持ちの令嬢MKさんからの自宅へのお誘いだ。
<いわろう>は、もちろん二つ返事で快諾した。
あの日、プレセントとして何を携えて行ったのか、全く忘却の彼方たが、当日御馳走になった<オムライス>の美味かったことと、<クッキー>の洒落た味わいは、半世紀の時空を越えても見事に蘇る。
昭和三十年代前半当時も、我が家はご多分にもれず、シッカリと貧乏だった。
おそらく、まともな<オムライス>や、<クッキー>を食したのは、あのMKさん宅が、生まれて初めてだったと思う。
そもそも、米国ではすべてクッキーで、英国ではすべてビスケットと呼び、本来両者に明確な違いはないのだが。
クッキーは高級品で、日頃よく食していたビスケットは、安物だとする偏見が、還暦を越えてもなお<いわろう>の心の内で燻っている。
多分MK宅で、あのとき幼な心に、刷り込まれてしまったのだろう。
余談だが、日本の全国ビスケット協会では1971年以来、手作り風の外観をもち、糖分と脂肪分の合計が40%以上のものを<クッキー>と呼ぶ、自主規約をもうけているらしい。
この記事を書くにあたり、日経新聞(2012/11/3 朝刊・生活発見)を参考にし、一部引用させていただきました。



ほろ酔い加減のY君がポツリといった。
「潮吹きってホントにあるゾ!」
いわろうは、聞き返した。「潮吹きって?鯨の?」
「チェッ!なにとぼけてんだヨ!」「…」
真顔のいわろうにY君は、ニタニタしながらいった。「こないだのオンナのことだよ…」
そういわれて、いわろうもやっと意味がわかった。
「そういえば潮吹きって!一頃流行った!けど、あれって小便のことだろう?」「だから、違うって!」
Y君は、酎ハイを一口飲んで、唇を舐め舐め熱く語った。
「とにかく敏感なオンナだったんだ。ア~とかウ~とかの声は、ちょっとオーバーで、なんだか演技ポッかったけど…」
Y君の話しによれば、彼女の華を覗き込んで愛撫中、顔面にその〈潮吹き〉をまともに受けたらしい。
それが、少しもショッパくなかったそうだ。
話してて、初めて分かったのだが、Y君にはご婦人のオショウスイを顔面にあびる性癖もあるらしい。
それはそれは、こよなく興奮するとか、いわろうには到底理解できない行為だが…。
Y君は、誰にも迷惑かけてないからいいだろって胸をはる。
そういえば、何処の誰かは、彼女の脱ぎたてパンティを頭からスッボリ被るのが、堪らなく好きだって…。
人の趣味嗜好は、エロエロだナァ~。



デフレスバイラルが更に進行し、価格破壊に拍車がかかる昨今ではあるが、カミさんの美容代は、別世界のようだ。
「どう?」
美容院からもどりたて、首を左右に振って<いわろう>に、髪型の出来栄えを確認させるカミさんに「うん!いいじゃあないか」とシブシブ社交辞令を言わなければならない、あの比類なき苦痛から、そろそろ逃れたいものだ。
だって、カミさんの<タダの髪切り代>の支払時に、あの福沢諭吉様へ召集礼状が発行されると聞くからだ。
「先生への指名料も入ってるから…」
若いイケメンの美容師との語らいに胸ときめかすお年頃でもないのに…。カミさんのささやかなアバンチュールなのだろうか?
財布の底にへばり付いている諭吉先生をスンナリと旅立たせてしまうイケメンが憎い。
一方<いわろう>さんの髪切り代はといえば、なんと野口英世先生をばお一人出せば、お釣りが戻る950円ナリ!だ。
カミさんの一回の美容代で、<いわろう>なら一年間楽々髪切りできる勘定だ。
ところで、美容師はヒゲソリをしてはいけない決まりになっているらしい。だからたまに、床屋でご婦人の客を見かけるわけだが・・・。
折角だから、ヒゲソリに来たついでに、髪切りも安上がりに床屋で済ませればいいのにと思うのは、あまりにも世間知らずで、貧乏な<いわろう>だけの稚拙なる発想なんだろうか?


